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緑内障とは視神経が損傷を受ける病気で、眼圧の上昇を伴うことが多く、進行性で回復不能の視力喪失を起こすことがあります。
緑内障にかかっている人は、米国では約300万人、世界中では1400万人に上ります。緑内障にかかるリスクは、(1)40歳以上、(2)家族の中に緑内障患者がいる(いた)、(3)遠視または近視である、(4)糖尿病を患っている、(5)コルチコステロイド薬を長期間使用している、(6)過去に眼にけがをしたことがある、(7)アフリカ系アメリカ人である―などの条件にあてはまる人で高くなります。緑内障は、世界の失明原因の第3位となっています。
緑内障は、眼の中の液体である房水の産生量と排出量のバランスが崩れ、眼圧が異常なレベルにまで上昇すると起こります。眼に栄養を与えている房水は、通常は毛様体によって虹彩の裏側にある毛様体(後房内)でつくられ、眼の前方(前房)に流れていき、虹彩と角膜の間の排出管(隅角)から排出されます。このシステムはちょうど水道の蛇口(毛様体)と排水口(隅角)のような関係で、正常に機能していれば、水が流しにたまることなく流れていきます。房水の産生と排出のバランス、つまり開いた蛇口ときちんと排水できる排水口のバランスによって、眼の中で房水が常に流れ、眼圧の上昇が防止されています。
緑内障では、房水を排出する管が詰まったり閉じてしまったりします。そうなると、眼の中の房水は前房で新しい房水が産生されても外に出ていくことができません。つまり、水道の蛇口が開いたままなのに、排水口は詰まった状態になるわけです。房水が眼の中で行き場を失い、その結果、眼圧が上昇します。眼圧が高くなって視神経が耐えられる限度を超えてしまうと、緑内障になります。また、眼圧の上昇が正常範囲にとどまっていても、視神経がそれに耐えられない場合もあります。
緑内障には、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障という大きく2つのタイプがあり、ほとんどの緑内障はこのいずれかに該当します。
最も多くみられるのは、開放隅角緑内障です。このタイプの緑内障では、眼の排出管が数カ月から数年かけて徐々に詰まっていきます。房水は正常に産生されているのに排出が少しずつしか行われないため、眼圧が徐々に上昇します。
閉塞隅角緑内障は、開放隅角緑内障に比べるとはるかに頻度の低い病気です。このタイプの緑内障では、房水の排出管が突然詰まり、あるいはふさがってしまいます。房水の産生は続いているのに排出が突然止まるため、眼圧が急に上昇します。
開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障ともに遺伝する傾向がみられるものの、多くの場合、緑内障の原因は不明です。遺伝以外では、感染症や炎症、腫瘍、広範囲の白内障、白内障手術などによる眼の障害が原因で房水の排出が妨げられ、眼圧が上昇して視神経が損傷されることがあります。こうした緑内障を続発緑内障と呼びます。
症状
開放隅角緑内障: 開放隅角緑内障は痛みがなく、最初のうちは症状も出ません。このタイプの緑内障の最も重大な症状は、数カ月から数年以上かけて視界の中に小さな視野欠損(ものが見えない部分)ができることです。視野欠損は徐々に大きくなり、やがて点同士が融合します。通常は、最初に周辺部の視野が失われます。この視野欠損はゆっくりと進行していくので、かなりの視野が失われてしまうまで本人が気づかないこともめずらしくありません。視野は周辺から失われはじめて中心部が最後に残ることが多いため、多くの人が真正面は問題なく見えるのにそれ以外の方向は見ることができないトンネル視(求心性視野狭窄)を起こします。緑内障を治療せずに放置していると、最後にはこの中心部の視野も失われて完全に失明します。
閉塞隅角緑内障: 閉塞隅角緑内障では眼圧が急速に上昇します。そのため、このタイプの緑内障にかかると、激しい眼の痛みや頭痛、眼の充血、視界がぼやける、光の周囲ににじみ(ハロ)が見える、視力が急速に低下するといった症状が突然現れ、本人がすぐに異常に気づきます。眼圧の上昇により吐き気や嘔吐が生じることもあります。
閉塞隅角緑内障では、症状が現れてすぐに治療しないと2〜3時間以内に視力が失われるおそれがあるため、対応は緊急を要します。
開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障ともに、片方の眼に発症した場合は、もう片方の眼も同じ病気にかかる傾向がみられます。
検査と診断
最も多くみられるタイプの緑内障では、何年もかけて徐々に視力が失われていき特に目立つ症状も出ないので、早期に発見することが非常に大切です。緑内障にかかるリスクが高い人は、1〜2年ごとに眼の総合的な検査を受ける必要があります。具体的には、(1)40歳以上の人、(2)親族に緑内障を患った人がいる人、(3)強度の近視や遠視の人、(4)糖尿病患者、(5)ステロイド薬を長期間使用している人、(6)以前眼にけがをしたことのある人、(7)アフリカ系アメリカ人―などは、リスクが高いとみられます。
緑内障に関する検査は、4種類あります。1つは眼圧測定です。これはトノメーター(眼の病気の症状と診断: 眼圧測定を参照)という器具を使って行うもので、痛みはありません。眼圧が20〜22mmHg以上ある場合は正常より高いとみなされます。
しかし、緑内障患者の3分の1以上では眼圧が正常範囲にあるため、眼圧測定だけでは診断できません。そのため、検眼鏡やスリットランプを使って視神経を観察し、緑内障による損傷がないかどうかを調べます(検眼鏡のしくみと働き を参照、スリットランプのしくみ を参照)。
さらに、周辺視野を調べる検査を行うことで、視野欠損の有無がわかります。視野検査には、視野内に小さい光の点を表示してそれが見えるかどうかを検査する機器を用いるのが一般的です(眼の病気の症状と診断: 視野検査を参照)。
また、隅角鏡検査(ゴニオスコピー)と呼ばれる検査があります。これは特殊なレンズで房水の排出管の状態を調べる検査です。この検査を行うと、緑内障の型が開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障のいずれであるかを調べることができます。
治療
緑内障で失われた視力は、二度と回復しません。しかし、早期に診断されて適切な治療を受ければ、それ以上視力が失われるのを防ぐことができます。緑内障治療の目的は、視力喪失が始まるのを防ぎ、あるいは視力喪失の進行を止めることにあります。
緑内障の治療は一生涯続きます。具体的には、房水の産生量を減らすか、排出量を増やして眼圧を下げます。眼圧は高いが視神経には損傷が出ていない、いわば緑内障予備軍のような人もいますが、その場合は治療せず慎重に経過を観察します。
開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障とも、点眼薬と手術が治療の中心になります。
緑内障治療の点眼薬としては、ベータ遮断薬(ベータ‐ブロッカー)、プロスタグランジン製剤、アルファ作動薬、炭酸脱水酵素阻害薬、コリン作動薬などを含むものがよく用いられます。開放隅角緑内障にはこれらの薬がよく効きます。閉塞隅角緑内障の治療は手術が中心になりますが、開放隅角緑内障と同種の薬剤も使われます。緑内障用の点眼薬はおおむね安全性が高いのですが、さまざまな副作用を引き起こすこともあります。緑内障患者はこれらの点眼薬を一生継続して使う必要があります。また、眼圧や視神経の状態、視野の状態を定期的に検査しなくてはなりません。
手術による治療は、(1)点眼薬では眼圧が十分コントロールできない、(2)患者が点眼薬を使えない、(3)点眼薬を使用して副作用が出た―などの場合に必要となります。開放隅角緑内障では、詰まった排出管をレーザー線維柱帯形成術で通します。閉塞隅角緑内障では、レーザー周辺虹彩切除術またはレーザー虹彩切開術で虹彩の中に開口部をつくります。どちらの手術も、房水の排出を改善する手法です。手術は外来で行います。手術の際は点眼薬で麻酔をかけ、患者は手術当日に帰宅できます。
緑内障の手術にはこのほか、ろ過手術と呼ばれる方法もあります。眼の中に房水のバイパスを作り、そこを通って房水が排出されるようにするもので、代表的なものは線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)と呼ばれる方式です。手術は比較的規模の大きい病院で行われる傾向があります。患者は手術当日に帰宅できます。
緑内障のレーザー手術で最もよくみられる合併症は、一時的な眼圧の上昇です。これは緑内障用の点眼薬で治療します。まれに、レーザーにより角膜にやけどが生じることがありますが、通常はすみやかに治ります。レーザー手術か他の方式かにかかわらず、ろ過手術の術後には眼の炎症と出血がみられることがありますが、これらは一時的なものです。まれに、ものが二重に見えたり(複視)、白内障や感染症が生じることがあります。
緑内障手術の後は点眼薬が処方されます。また、眼圧をチェックし手術の効果を確認するため検査が行われます。
重度の閉塞隅角緑内障は緊急の処置を要するため、場合によっては前述の点眼薬や手術よりも効果が高く、即効性のある治療法を用います。眼が高眼圧に弱いと考えられる場合は、グリセリン、アセタゾラミドの錠剤、マンニトールなどの点滴を用います。点眼薬もできるだけ早く使用します。必要に応じ緊急手術も行います。
続発緑内障の場合は、原因となっている病気によって治療が異なります。感染症や炎症が原因の場合は、抗生物質、抗ウイルス薬、ステロイド点眼薬が有効な場合があります。腫瘍が房水の排出を妨げている場合や、白内障が広範囲にわたるために眼圧が上がっている場合はそれぞれに治療が必要です。白内障手術によって眼圧が高くなった場合は、眼圧を下げる点眼薬を用います。点眼薬が効かない場合は、房水の排出路を新しくつくるため、ろ過手術を行います。
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薬の種類
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薬剤名
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主な副作用
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備考
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ベータ遮断薬
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- ベタキソロール
- カルテオロール
- レボベタキサロール
- レボブノロール
- メチプラノロール
- チモロール
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息切れ、心拍数の低下、頭のふらつき、手足の指の冷え、不眠、疲労、うつ、鮮明な夢をみる、幻覚、性機能不全、脱毛。高血圧: 主な降圧薬 を参照 |
作用:房水の産出量を抑える
剤形:点眼薬
その他:心臓、肺、血管に病気のある人では一部の副作用が強く現れる
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プロスタグランジン製剤
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- ビマトプロスト
- ラタノプロスト
- トラボプロスト
- ウノプロストン
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眼や肌の色素増加、まつ毛が長く濃くなる、筋肉痛、関節痛、背部痛、皮膚の発疹 |
作用:房水の排出量を増やす
剤形:点眼薬
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アルファ作動薬
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- アプラクロニジン
- ブリモニジン
- ジピベフリン
- エピネフリン
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血圧の変化、不整脈、頭痛、疲労、口が渇く、鼻が乾く |
作用:房水の産出量を抑えて排出量を増やす
剤形:点眼薬
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炭酸脱水酵素阻害薬
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- アセタゾラミド
- ブリンゾラミド
- ドルゾラミド
- メタゾラミド
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疲労、体重減少、うつ、食欲減退、吐き気、勃起不全(インポテンス)、金属のような味や苦味を感じる、下痢、腎臓結石、血球数の減少 |
作用:房水の産出量を抑える
剤形:ブリンゾラミド、ドルゾラミドは点眼薬、アセタゾラミド、メタゾラミドは内服薬
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コリン作動薬
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- カルバコール
- デメカリウム
- エコチオフェート
- フィゾスチグミン
- ピロカルピン
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瞳孔収縮、ものがぼやけて見える、白内障、発汗、頭痛、ふるえ、唾液が過剰に出る、下痢、急激な腹痛、吐き気 |
作用:房水の排出量を増やす。隅角を広げる効果が得られることもある
剤形:点眼薬。フィゾスチグミンは軟膏
その他:デメカリウム、エコチオフェート、フィゾスチグミンはカルバコールとピロカルピンに比べて作用が強い半面、白内障や全身の副作用も引き起こしやすい
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