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インフルエンザ

インフルエンザは流行性感冒とも呼ばれ、インフルエンザウイルスによって起こる肺と気道の感染症で、発熱、鼻水、のどの痛み、せき、頭痛、筋肉痛、全身のけん怠感などを伴います。

毎年晩秋から初冬にかけて、世界各地でインフルエンザが発生します。インフルエンザは流行性で、一度に多くの人がかかります。通常、流行は単一のインフルエンザウイルス株によって引き起こされます。ウイルス株の名前は、「香港かぜ」のように最初に見つかった地域から取ったり、「ブタかぜ」のようにウイルスが見つかった動物の名前から取ったりします。

インフルエンザウイルスにはA型とB型の2つのタイプがあり、それぞれに多くの異なる株が存在します。引き起こす症状はどれも似ていますが、流行を起こすウイルス株は常に変化しています。流行するインフルエンザウイルス株は常に変化しているため、前に有効だったワクチンが効かないこともしばしばあります。

インフルエンザは普通のかぜとは明らかに違います。かぜとは異なるウイルスが原因で、症状もかぜより重くなります。また、インフルエンザウイルスは気道のはるか奥まで侵します。

インフルエンザは、くしゃみやせきで周りに飛び散った飛沫を吸いこんだり、感染者の分泌物に直接触れたりして感染します。感染者がさわったものや、感染者の分泌物が付着したものを介して感染が広がることもあります。

症状と診断

症状は感染の24〜48時間後に現れますが、突然始まることもあります。寒気やゾクゾクする感じがインフルエンザの最初の徴候であることが多く、初めの数日間は熱が出て、39〜39.5℃まで上がることもあります。ベッドから出られないほど具合の悪い状態が数日続き、腰や脚をはじめ体中が凝り、痛みます。頭痛も激しく、眼の周囲や奥が痛みます。明るい光で頭痛が悪化することもあります。

呼吸器症状は最初のうちは比較的軽く、いがらっぽいのどの痛み、胸が焼けるような感覚、空せき、鼻水などがみられます。その後、たんの絡んだ深いせきが出るようになります。特に顔の肌が熱く、紅潮します。口やのども赤くなり、眼は潤んで充血します。また、特に小児では吐き気や嘔吐がみられます。少数ですが、数日から数週間にわたってにおいを感じなくなるケースがあり、まれに元に戻らないことがあります。

ほとんどの症状は2〜3日後には治まりますが、熱は5日ほど続くことがあり、せきは10日以上、気道の炎症がすっかりなくなるまでには6〜8週間かかることもあります。けん怠感や脱力感も数日から数週間続きます。

インフルエンザの合併症で最もよくみられるのは肺炎です。インフルエンザウイルス自体が肺に広がるウイルス性肺炎と、肺炎球菌などインフルエンザとは関係のない細菌が防御機能の弱まった体を攻撃して起こる細菌性肺炎があります。両方とも、せきがひどくなり、熱が持続または反復し、呼吸困難、ときには血たんがみられます。肺炎は、高齢者、心臓または肺の疾患がある人がかかりやすく、長期療養施設で高齢者がインフルエンザにかかった場合、7%が入院を必要とし、1〜4%が死亡します。若い人でも、慢性疾患がある場合は重い合併症を起こす危険性が高くなります。

インフルエンザの症状はよく知られており、また流行性に起きるので、しばしばインフルエンザにかかった本人やその家族によって正しく診断されます。症状の重さ、高熱や全身の痛みといったような特徴から、かぜとは区別がつきます。血液や呼吸器の分泌物を検査すればインフルエンザウイルスを同定できますが、特別な場合にしか行いません(訳注:現在日本では迅速診断キットが広く使用されています)。

予防

予防接種は、インフルエンザにかかることを防ぐ最善の方法です。インフルエンザワクチンには、不活化した(死んだ)インフルエンザウイルスか、ウイルスの断片が含まれています。現在のワクチンは3種類のインフルエンザウイルス株に有効ですが、ウイルスの変化に対応するため、接種されるワクチンは年によって異なります。前のインフルエンザシーズンに流行した株や、世界の他の地域で発生した株などを基に、その年に流行しそうな株を予測します。

小児、50歳以上の人、糖尿病、肺疾患、心疾患といった慢性疾患がある人など、感染すると重症になりやすい人は、ワクチン接種を受けることが特に大切です。たまに注射部位が痛くなることを除けば、ワクチンによる副作用が起こることはまれです。

米国では、インフルエンザの流行がピークとなる11月から3月に抗体のレベルが最高となるよう、秋にワクチン接種を行います。普通、ワクチン接種の効果が得られるようになるまで約2週間かかります。

インフルエンザウイルスに対しては、数種類の抗ウイルス薬が感染予防に使用されています。インフルエンザ患者と明らかな接触があった場合に処方されます。またこれらの薬は、ワクチン未接種でかつインフルエンザで合併症を起こすリスクが高い人(高齢者や慢性疾患がある人など)を守るため、インフルエンザの流行時に使用されます。

アマンタジンとリマンタジンは、A型インフルエンザには有効ですがB型インフルエンザには効かない少し前の抗ウイルス薬です。これらの薬は、高齢者および脳や腎臓に疾患がある人の場合、胃痛、神経過敏、不眠などの副作用が出ることがあります。リマンタジンはアマンタジンに比べると副作用が少ない傾向がみられますが、両方ともこれらの薬に耐性のウイルスができやすいという短所があります。

新薬のオセルタミビルとザナミビルは、A型インフルエンザとB型インフルエンザのどちらの感染も予防でき、副作用も少ない薬です。

ワクチンによるインフルエンザの予防

  • インフルエンザワクチン接種が勧められる人
    • 50歳以上の人
    • 老人ホームなどの入居者
    • 成人および生後6カ月以上の小児で、糖尿病、心疾患、慢性肺疾患、免疫機能に問題がある人
    • 上記にあてはまる人の家族と介護者
    • 医師と医療従事者
    • インフルエンザ流行期に妊娠中期(13〜24週)または後期(25週以降)を迎える妊婦(インフルエンザにより合併症の危険が増すような医学的状態にある妊婦は、妊娠週数にかかわりなく、流行期前に接種を受けるのが望ましい)
    • 18歳未満の子供で長期的にアスピリンによる治療を受けている場合(インフルエンザにかかるとライ症候群になる危険がある)
  • インフルエンザワクチン接種が勧められない人
    • 卵に対して強いアレルギーがある人
    • ギラン‐バレー症候群の既往がある人
    • 現在、発熱性の病気にかかっている人(軽いかぜを除く)

治療

インフルエンザでは、安静にして十分な水分を摂取し、激しい活動を避けることが治療の中心となります。普段の活動は平熱に戻ってから24〜48時間後に始めてもかまいませんが、完全に回復するにはさらに数日かかります。熱や痛みにはアセトアミノフェンを使うか、アスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使います。ライ症候群の危険があるため、小児にはアスピリンを与えるべきではありません。必要があれば、アセトアミノフェンとイブプロフェンは使用してもかまいません。鼻づまりに血管収縮薬や蒸気の吸入など、かぜの項で挙げた対症療法も症状の緩和に役立ちます。

感染を予防するアマンタジン、リマンタジン、オセルタミビル、ザナミビルなどの抗ウイルス薬は、インフルエンザ患者の治療にも有効です。ただし、発病後1〜2日以内に服用しないと効果がなく、また効果も、熱や呼吸器症状を1日程度短くするだけです。それでも、非常に有効な場合もあります。大半の医師は、A型とB型のインフルエンザの両方に効くザナミビルやオセルタミビルを勧めます。二次的な細菌感染症が起こった場合は、抗生物質を使います。

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