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潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは、大腸に炎症が起こり、潰瘍を形成する慢性疾患で、出血性の下痢や腹部の激しい痛み、発熱を伴う発作を起こします。

潰瘍性大腸炎はどの年齢にも起こりえますが、普通は15〜30歳で発症します。少数ながら50〜70歳で最初の発作を起こす人もいます。

潰瘍性大腸炎では、通常は大腸壁がさほど肥厚化せず、小腸に及ぶこともほとんどありません。潰瘍性大腸炎は、直腸やS状結腸から始まるのが通常で、最終的には大腸の一部または大腸全体に広がります。発症初期から、大腸全体が侵される例もあります。

潰瘍性直腸炎は直腸に限局して起こる炎症で、比較的良性型の潰瘍性大腸炎で、頻度も多い疾患です。

潰瘍性大腸炎の原因はわかっていません。しかし遺伝と腸の過剰な免疫反応が関係しています。タバコの喫煙はクローン病には有害ですが、潰瘍性大腸炎のリスクは減らしているように思われます。ただし喫煙はさまざまな健康上の問題を起こす原因となるので、潰瘍性大腸炎のリスクを下げるために喫煙することは勧められません。

症状

潰瘍性大腸炎の症状は再発します。突然重症の発作が起こり、激しい下痢、高熱、腹痛、腹膜炎を起こすことがあります。このような再発の間は、重態になります。より多いのは徐々に始まる再発で、便意が切迫するようになり、下腹部が軽くけいれんして、便には血と粘液が混じります。再発は数日から数週間にわたって続き、いつでも再発する可能性があります。

炎症が直腸とS状結腸に限局している場合は、便は正常か硬く乾燥している状態になります。しかし、排便中または排便と排便の間に、大量の赤血球と白血球を含む粘液が直腸から分泌されます。発熱などの全身症状はみられないか、あっても軽度です。

炎症が大腸の上の方へ広がると、便は軟らかくなり、1日に10〜20回ほど排便します。患者はしばしば重症の腹部けいれんに悩まされ、痛みを伴う直腸のけいれんにより便意を催します。夜間も症状は緩和しません。便は水っぽく、膿や血液、粘液を含んでいます。しばしば便全体が血液と膿になることがあります。また発熱や食欲不振が起こり、体重が減少します。

合併症

出血は最もよくみられる合併症で、しばしば鉄欠乏性貧血を起こします。潰瘍性大腸炎になった人のほぼ10%で、最初の発作が急激に進行して重症になり、大量の出血と穿孔や広範囲の感染を伴います。

中毒性大腸炎は特に重症の合併症で、腸壁全体が肥厚して損傷します。この損傷は、腸壁の正常な収縮運動が一時的に止まるイレウス(腸閉塞)と呼ばれる状態を起こし、腸の内容物が前進しなくなり、腹部が膨満します。中毒性大腸炎が悪化すると大腸の筋緊張を失い、数日、時にはわずか数時間で拡張しはじめます。腹部X線検査では、腸の麻痺(まひ)した部分にガスが充満しているのが映ります。

中毒性巨大結腸とは、大腸が異常に拡張した状態です。この状態は非常に重篤で、高熱が出ます。腹痛と腹部の圧痛があり、白血球数が増加します。腸が破裂すると、死亡するリスクが高くなります。しかし、腸が破裂する前に迅速な治療を受けた場合、死亡率は4%未満です。

結腸癌は、末期の潰瘍性大腸炎患者に毎年100人に1人の割合で発症します。潰瘍性大腸炎が広範囲にわたる場合は、100人に10人が結腸癌になります。結腸癌のリスクが最も高いのは、病気の活動性に関係なく、潰瘍性大腸炎が大腸全体に及んでいる場合と、罹患期間が8年以上の場合です。潰瘍性大腸炎が8年以上続く場合、大腸内視鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いた大腸の検査)を毎年または2年に一度は行います。大腸内視鏡検査の際に、大腸各所から組織を採取し、病理組織診を行います。癌が初期に発見された場合、ほとんどの人が助かります。

その他の合併症は、クローン病のそれと同じです。潰瘍性大腸炎による胃腸症状が再発すると、関節炎や上強膜炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症(えそせいのうひしょう)などの炎症が現れます。潰瘍性大腸炎による胃腸症状の再発がない時期でも、脊椎に炎症が生じて強直性脊椎炎となったり、股関節の炎症(仙腸骨炎)や眼の内部の炎症(ぶどう膜炎)が起こります。

潰瘍性大腸炎では、普通軽度の肝機能不全がみられますが、肝臓疾患の症状が現れるのは軽症から重症を含めても1〜3%ほどです。重症の肝臓疾患は、慢性活動性肝炎や、胆管が狭くなり、ついには閉塞する原発性硬化性胆管炎、肝臓の機能組織が瘢痕(はんこん)化する肝硬変などです。胆管炎は、潰瘍性大腸炎の腸症状が現れる何年も前から起こります。胆管炎になると胆管癌になるリスクがきわめて高くなり、結腸癌のリスクも高くなります。

診断

症状と便の検査により診断を確定します。血液検査では貧血や、白血球数の増加、アルブミン(血液中のタンパク質)濃度の減少、赤血球沈降速度(ESR)の上昇がみられ、これらは炎症が活発になっていることを示します。S状結腸鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いたS状結腸の検査)を行うと、炎症の重症度を直接観察し、診断を確定できます。症状がない時期でも、腸全体が正常にみえることはほとんどなく、病理組織診でも慢性炎症が認められます。

腹部X線検査では、炎症の程度と広がりがわかります。バリウム注腸後のX線検査や大腸内視鏡検査は、この病気の活動期に行うと穿孔を起こすリスクがあるので、通常は治療を開始する前には行いません。しかし大腸全体への炎症の広がりを診断するために時期をみて、大腸内視鏡検査を行います。

写真

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎

経過の見通しと治療

一般に潰瘍性大腸炎は慢性疾患で、良くなったり悪くなったり(再燃と寛解)を繰り返します。全体の約10%が、急激に進行する初期症状から重篤な合併症を来します。他の10%は一度の発作だけで完全に回復します。しかし、発作が一度だけですむ人は、実際には潰瘍性大腸炎による潰瘍化ではなく、見つかっていなかった感染症によることもあります。

経過の見通し(予後)は、炎症と潰瘍が直腸だけに限局している潰瘍性直腸炎が最も良く、重篤な合併症はほとんどみられません。しかし、約10〜30%では潰瘍性直腸炎が大腸全体に広がり、潰瘍性大腸炎となります。

治療は、炎症を抑え、症状を軽減し、体液と栄養素を補うことを目的として行います。

食事制限: 便中に血液が失われることによる貧血は、鉄剤の補給で改善されます。炎症を起こしている大腸の内膜が傷つかないように、生野菜と果物は避けます。乳製品を含まない食事により、症状が軽減することがあるので、試してみる価値はありますが、効果がなければ続ける必要はありません。

下痢止め薬: 抗コリン作用薬、または少量のロペラミドやジフェノキシレートは、比較的症状の軽い下痢に用いられます。もっと激しい下痢には、高用量のジフェノキシレート、脱臭アヘンチンキ、ロペラミド、コデインなどが必要になるでしょう。重症のケースでは、これらの薬による中毒性巨大結腸を引き起こさないように投与後の状態を慎重に観察します。

抗炎症薬: 潰瘍性大腸炎の炎症を軽減させ、再燃を予防するためにスルファサラジン、メサラミン、オルサラジン、最近開発されたバルサラジドを用います。これらの薬は普通は経口投与されますが、メサラミンは浣腸や座薬としても使用できます。経口投与でも直腸投与でも、これらの薬は、軽度から中等度の病気を維持したり寛解するには、限定的な効果しかありません。

ベッドで安静にしなければならないほど重い炎症でなければ、プレドニゾロンなどのステロイド薬を経口投与します。高用量のプレドニゾロンを頻繁に服用すると、劇的な寛解が得られます。プレドニゾロンで潰瘍性大腸炎の炎症をコントロールした後に、改善を維持するためにスルファサラジン、オルサラジンやメサラミンを投与します。プレドニゾロンは徐々に用量を減らし、最終的には投与を中止します。ステロイド療法が長びくと、必ず副作用が現れます。ステロイド薬の新薬、ブデソニドはプレドニゾロンより副作用が少ないですが、効果もプレドニゾロンほどではありません。軽度から中等度の潰瘍性大腸炎が左側の下行結腸と直腸に限局している場合には、ステロイド薬やメサラミンの座薬を投与します。

症状が重症の場合には、入院が必要となり、ステロイド薬と水分を静脈内投与します。直腸に大量の出血がみられる場合は輸血が必要となります。

免疫抑制薬: アザチオプリンやメルカプトプリンなどの薬は、長期のステロイド療法でなければ寛解を維持できない潰瘍性大腸炎患者に使われます。この免疫抑制薬は免疫系で重要な働きをするT細胞の作用を阻害します。しかしこれらの薬の作用はゆっくりで、2〜4カ月間しないと効果がみられません。また、重篤な副作用を起こす可能性があるので、医師による慎重な経過観察が必要です。シクロスポリンは、重篤な再発を起こしステロイド療法でも効果が現れない場合に投与されます。多くの患者が当初はシクロスポリンに反応しますが、最終的には手術が必要になるケースもあります。

手術: 他の治療では寛解が得られない慢性の炎症で患者が衰弱している場合や、高用量のステロイド療法に慢性的に依存している場合、手術が必要になります。まれですが、壊疽性膿皮症や腕・脚の深部静脈血栓症が重症の場合など、大腸炎に関連する腸以外の異常が起きた場合にも手術が必要となります。

大腸において癌の診断がついたり、癌性の変化である形成異常が確認された場合は、緊急ではなく待機手術を行います。大腸が狭窄した場合や小児に成長の遅れがみられるときにも手術を行います。大腸全体と直腸の切除により、潰瘍性大腸炎は完全に治癒します。この治療法には、小腸の最後部と腹壁の開口部との間を手術でつなぐ回腸造瘻術を行い、腸瘻バッグを生涯にわたって使用するという代償が伴いました。しかし、他にもさまざまな方法が開発されており、その最も一般的な例が回腸‐肛門吻合術です。この治療法は、大腸と直腸の大部分を切除し、小腸に小さな貯蔵部を形成して、それを肛門のすぐ上の直腸残存部につなぐ手術法です。この治療法では、便を排泄するまで体内にとどめておくことができますが、貯蔵部の炎症などの合併症が起こるおそれがあります。

潰瘍性直腸炎では、手術が必要になるのはまれで、余命にも影響はありません。しかし、一部には、どの治療法によっても症状が改善されない例もあります。

中毒性大腸炎は手術を必要とする緊急事態です。中毒性大腸炎が見つかったり中毒性巨大結腸の疑いがあれば、即座に下痢止め薬は中止して絶食し、胃か小腸に経鼻チューブを挿入して定期的に吸引します。水分と栄養、薬剤は点滴で投与します。患者に腹膜炎や穿孔の徴候がないかどうか、注意深く観察します。これらの処置で24〜48時間以内に症状の改善がみられない場合は、緊急手術が必要となります。その場合大腸全体か大腸の大部分を切除します。

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