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オピオイドは強力な鎮痛薬として、医療目的での合法的な用途をもつ物質です(痛み: オピオイド鎮痛薬を参照)。コデイン(依存性は低い)、オキシコドン(単独使用のほか、アセトアミノフェンとの併用などさまざまな組み合わせでも使用)、メペリジン、モルヒネ、ペンタゾシン、ヒドロモルホンなどがあります。またヘロインは、米国では違法ですが、ごく一部の治療に限って使用している国もあり、最も強力なオピオイドの1つです。どのオピオイドも依存性を生じることがあります。
鎮痛薬として適切に処方されたオピオイドを服用しても、依存を起こすことはあります。鎮痛薬としてオピオイドを数日間以上服用した人の多くが、使用を中止すると若干の離脱症状(いわゆる禁断症状)を生じますが、医師の管理下で使用する限り、重大な依存や嗜癖が起こることはめったにありません。
オピオイドを2〜3日間連続使用すると、耐性(ある薬物に体が慣れて効きにくくなる現象)が生じます。耐性が生じた人は、薬物使用の徴候をほとんど示さず、薬物が手に入る限り、正常な状態でいつもの日常生活を送ります。
症状と合併症
オピオイドには多くの作用があります。強い鎮静作用をもち、使用すると無口で内省的な気分になります。ときには、激しい痛みが消えてやっと楽になったというだけで強い陶酔感をもたらすこともあります。痛みを和らげ、性的快感を高める効果もあります。また、便秘、皮膚のほてり、血圧低下、かゆみ、瞳孔収縮、遅くて浅い呼吸、心拍数減少、低体温が生じます。オピオイドは錯乱も引き起こし、特に高齢者では顕著です。
オピオイドの嗜癖からはさまざまな合併症が生じ、特に滅菌していない注射針を共用して注射した場合に危険性が高くなります。たとえば、注射針を共用すると、肝臓に損傷を引き起こすウイルス性肝炎などの病気がうつるおそれがあります。注射した部位が感染を起こしたり、そこから感染が血流に及び(敗血症)、脳や骨に感染を引き起こすこともあります。
骨化性筋炎は、米国では「薬物乱用者のひじ」と呼ばれる状態で、注射針を不適切な位置に刺すことを繰り返したために、ひじ周辺の筋肉が瘢痕(はんこん)組織に置き換わってしまうものです。皮下注射によって皮膚の潰瘍(かいよう)が生じることもあります。静脈注射を繰り返すうちに静脈が瘢痕化すると、静脈への注射がますます困難になります。
オピオイドの常用者は、唾液(だえき)や嘔吐物の吸引による肺刺激、肺炎、膿瘍(のうよう)、肺塞栓、注射薬に不純物として含まれるタルク(滑石)が原因で生じる線維化などの肺障害を起こす可能性があります。免疫システムにも問題が生じます。また、注射針を共用することでヒト免疫不全ウイルス(HIV)が広がる可能性があり、オピオイド常用者の多くがエイズになります。米国では、注射針の共用が今では主要なHIV感染ルートになっています。
オピオイド常用者の場合、脳への血流が不十分になったために神経に問題が生じ、昏睡状態になることがあります。ヘロインの添加物としてよく使われるキニーネが、ギラン‐バレー症候群(末梢神経の障害: ギラン‐バレー症候群を参照)を含め、複視や麻痺(まひ)など神経の損傷を示す症状を誘発することがあります。メペリジンの合成過程で不純物として偶然生じるMPTPという物質は、脳に損傷を与え、重度のパーキンソン症候群を引き起こします(運動障害: パーキンソン病を参照)。
薬物の過量摂取は重大な生命の危険をもたらします。オピオイドは呼吸を抑制し、肺水腫を引き起こします。
妊娠中にオピオイドを使用することは特に危険です。ヘロインとメサドンは胎盤を容易に通過して胎児に達します。オピオイドを常用している母親から生まれた新生児には、ふるえ、かん高い泣き声、神経過敏、発作、速い呼吸などの離脱症状がみられます(妊娠中の薬物の使用: オピオイドを参照)。
離脱症状は、オピオイド使用を中止してから4〜6時間後に現れ、およそ36〜72時間以内にピークを迎えます。しかし、オピオイドの種類ごとに体外へ排出されるスピードが異なるため、離脱症状が生じるスピードも異なります。離脱症状は、オピオイドの使用量が多く期間が長いほど重くなります。
離脱に伴う徴候としては一般に、まず呼吸が速まるとともに、あくび、発汗、涙や鼻水などがよくみられます。このほか多動、過剰な覚醒(かくせい)感、、興奮、心拍数の増加、発熱、瞳孔が開く、鳥肌がたつ、ふるえ、筋肉のけいれん、ほてりと寒気、筋肉痛、食欲減退、腹部のけいれん、下痢などの徴候がみられます。
治療
救急治療: オピオイドの過量摂取は、死に至るおそれがある緊急事態であり、すみやかな治療が必要です。呼吸が抑制されている場合には、人工呼吸器による呼吸補助が必要になります。オピオイドの作用を中和する薬であるナロキソンを静脈注射します。
解毒とリハビリテーション: 離脱症状を緩和する治療が必要となります。オピオイド離脱の症状は、クロニジンと呼ばれる薬でも緩和できます。ただし、クロニジンには、血圧低下、眠気、不安、不眠、刺激への過敏性、心拍数の増加、頭痛などの副作用があります。オピオイドの代わりにメサドンを使用する治療法もあります。メサドンもオピオイドの1種ですが、内服薬で、他のオピオイドほど脳機能に影響しません。メサドンの効果は他のオピオイドに比べてはるかに長続きするため、投与回数も少なく、通常は1日1回の投与ですみます。その後、投与量を徐々に減らしていきます。
メサドンは、長期維持療法プログラムの一環としても使用できます。薬物嗜癖のある人に数カ月から数年間にわたってメサドンを定期的に与え続ける維持療法により、薬物を手に入れるという問題はとりあえず解決されるので、本人は社会的に生産性のある生活を送れるようになります。この治療法が効く人もいますが、社会復帰ができない人もいます。オピオイド常用者の多くは、メサドン維持療法を一生続けなければなりません。医療機関に毎日通院し、重度の離脱症状が出るのを予防できる最少量のメサドンを受け取ります。
メサドンの長時間作用型である酢酸レボメタジル(LAAM)を使っている治療センターも少数ですが存在します。LAAMの場合は毎日通院したり、薬を自宅へ持ち帰る必要がなくなります。ブプレノルフィンも維持療法に用いられます。この薬は開業医も処方できるため、メサドン維持療法を行う専門クリニックに行かなくても、メサドンによる解毒や維持療法と同様の治療が可能です。
ナルトレキソンはオピオイドの作用を阻止する薬です。投与量によって異なりますが、ナルトレキソンの効果は24〜72時間持続します。そのため、社会的背景が安定しているオピオイド常用者なら、ナルトレキソンを毎日(あるいは可能なら週3回)服用することで、オピオイドを使いたいという誘惑から逃れることができます。
ヘロイン中毒問題の対策として、米国では25年ほど前に治療共同体の概念が生まれました。デイトップ・ビレッジやフェニックス・ハウスが先駆けとなって非薬物療法が始まりました。中毒者が比較的長期(通常15〜18カ月)にわたって共同生活を行い、訓練や教育を受け、新たな方向づけを通して人生の立て直しを図ります。これらのプログラムは多くの人たちを助けてきましたが、実際にどの程度の効果があったのか、また、どこまでの範囲を対象とすべきかについては、明確な答えは出ていません。
エイズが流行したことで一部の人からは、オピオイドを注射する常用者に対し、滅菌した注射針と注射器を配布すべきだという提案が出ています。配布はHIV感染の減少につながることが示されています。
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