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筋肉が正常に機能するためには、筋肉の組織と、脳と筋肉を結ぶ神経が正常でなければなりません。運動神経が筋肉を正常に刺激しなければ、筋肉自体に問題がなくても筋力の低下や萎縮が起こり、完全に麻痺することもあります。
筋肉刺激の障害は運動ニューロン疾患とも呼ばれ、これには筋萎縮性側索硬化症、原発性側索硬化症、進行性偽球麻痺、進行性筋萎縮症、進行性球麻痺、ポリオ後症候群などが含まれます。運動ニューロン疾患は男性に多く、通常は50代に発症します。これらの病気は、大部分が原因不明です。運動ニューロン疾患の約10%は遺伝性で、家族に同じ病気の人がいます。
これらの病気はすべて、脊髄や脳の運動神経の変性が進行していき、筋力低下が起こり、さらに麻痺に進行します。しかし病気よって異なる神経系が侵されるため、最初に障害が現れる筋肉と体の部位も異なります。
症状
筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリッグ病): この病気は進行性です。最初は脱力で始まり、足よりも手に頻繁に起こります。左右どちらかの筋力低下がより進行し、腕や脚へ波及します。脱力に先立ってけいれんもよく起こりますが、感覚の変化はありません。時間の経過とともに脱力が著しくなり、けい縮が起こります。筋肉がつって硬直し、続いてけいれんが起こります。振戦も現れます。のどの筋肉が衰えると、構音障害(ろれつが回らないこと)や嚥下障害(ものが飲みこみにくいこと)をもたらします。最終的に呼吸を行う筋肉の力が低下して呼吸困難が起こり、一部の患者では人工呼吸器が必要になります。
筋萎縮性側索硬化症の進行の速さはさまざまで、約半数の人が発症から3年以内に死亡します。10%の人が発症後10年以上生存し、わずかですが30年も長生きする人もいます。
原発性側索硬化症と進行性偽球麻痺: これらの病気は、筋萎縮性側索硬化症のまれな変異型で、ゆっくりと進行します。原発性側索硬化症は主に腕と脚を、進行性偽球麻痺は主に顔面、あご、のどの筋肉を侵します。気分は変調気味になり、進行性偽球麻痺の人は理由もなく幸福と悲しみが素速く切り替わります。意味もなく感情を爆発させることもよくあります。これらの病気はともに重度の硬直を伴う筋力低下が起こり、通常は数年間にわたって進行した後、全身に障害が残ります。
進行性筋萎縮症: この病気は筋萎縮性側索硬化症と似ていますが、進行がより遅く、けい縮は起こらず、筋力低下もそれほど重症になりません。不随意な筋線維の収縮や引きつりが、最も早期の症状です。この病気の患者の多くは、25年以上生存します。
進行性球麻痺: ものをかんだり、飲みこんだり、言葉を話すのに使う筋肉をコントロールしている神経が侵されるために、それらの動作が次第に困難になる病気です。ものがうまく飲みこめなくなると食品や唾液が肺に入って、むせたりのどに詰まったりして、肺炎のリスクを増大させます。死因はしばしば肺炎で、通常は発症から1〜3年後に起こります。
ポリオ後症候群: ポリオから回復後15年以上もたってから、一部の人に筋肉の疲労、痛み、筋力低下を起こすことがあります。ときにはポリオの再活性化を示唆するような筋萎縮も起こります。しかし、ポリオになったことがある人でもこれらの症状の大部分は、ポリオ後症候群によるものではなく、糖尿病、椎間板ヘルニア、変形性関節症などの新たな病気によるものです。
診断
成人に痛みや感覚の消失を伴わない進行性の筋力低下がある場合、これらの疾患が疑われます。筋力低下の原因はたくさんあり(筋力低下の分類 を参照)、その原因を絞りこむために診断学的検査が行われます。たとえば筋肉の電気活動を記録する筋電図(脳、脊髄、神経の病気の診断: 筋電図を参照)は、神経と筋肉のどちらに問題があるのかを決定するのに役立ちます。しかし、どの神経障害によるものかまでは判定できません。診断は発症時に障害が現れた体の部位、初期症状、症状の経時的変化などに基づいて行われます。
治療
運動ニューロン疾患には、特異的な治療法がありません。理学療法は、筋力維持と筋肉の硬直(拘縮)の予防に効果があります。嚥下困難がある人は、食べたものがのどに詰まらないよう注意が必要です。一部の人は腹壁を通して胃に挿入したチューブ(胃瘻[いろう]チューブ)から栄養液を送りこまなければなりません。バクロフェン、フェニトイン、キニーネは、けいれんの抑制に効果があります。抗うつ薬のアミトリプチリンは、抗うつ作用のためではなく、抗コリン作用で唾液の分泌を抑制するのに使われます。
筋萎縮性側索硬化症と進行性球麻痺は、進行性で不治の病気のため、これらの病気になった場合にはあらかじめ、終末期のケアに関する本人の要望を記した事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)を作成しておくことが勧められています(法的問題と倫理的問題: 事前指示書を参照)。
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