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脳卒中は、脳の動脈が詰まったり破裂したりして、脳組織が壊死する病気です。
脳卒中は、脳と血管が侵されるため、脳血管障害と呼ばれています。
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脳の血液供給
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脳へ送られる血液は、内頸動脈と椎骨動脈の2対の大きな血管を通って運ばれます。内頸動脈は心臓から出る血液を首の前側に沿って運び、一方椎骨動脈は首の後側に沿って脳へ運んでいます。頭蓋内で左右の椎骨動脈は合流して、後頭部で脳底動脈となります。内頸動脈と脳底動脈は、大脳動脈を含む数本の動脈に枝分かれし、それらの動脈の枝が他の動脈の輪(ウィリス動脈輪)に合流して、椎骨動脈と内頸動脈が接続されます。他にも小さな動脈が、ちょうど幹線道路から分岐する道路のように、ウィリス動脈輪から枝分かれして脳のあらゆる部分へ血液を運んでいます。
脳に血液を送っている大きな血管が詰まると、人によっては症状がまったく現れなかったり、脳卒中の小発作が起きたり、あるいは大きな虚血発作が起きたりします。なぜ、そのような差が生じるのでしょうか? これは、先天的に脳卒中が起こりにくい動脈をもっている人がいるためで、特にウィリス動脈輪がその差を分けています。つまりウィリス動脈輪の直径が大きい人は、大きな血管が1本あるいは2本詰まっても、血液は脳全体に再び行きわたりますが、直径が小さかったり輪が不完全だったりする人は、血液がうまく再配分されません。また、生まれつき新しい血管(側副血管)を生じる能力をもっている人もいます。そういう人たちにおいては頸動脈が詰まっても、代わりにその閉塞部分を迂回する側副血管が新たにつくられます。
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欧米諸国では、脳卒中は死因の第3位で、アルツハイマー病に次いで、神経機能障害をもたらす病気の第2位になっています。米国では毎年60万人を超える人が脳卒中を起こし、約16万人が脳卒中で亡くなっています。脳卒中が若い人よりも高齢者にはるかに多いのは、脳卒中の原因となる異常が年齢とともに進行するためです。脳卒中全体の3分の2以上が、65歳を過ぎてから発生しています。脳卒中患者の半数強が男性ですが、脳卒中による死亡者数の60%以上を女性が占めています。これは、おそらく発症時の平均年齢が女性の方が高いためです。脳卒中の罹患率と死亡率は、黒人の方が白人よりも高くなっています。
脳卒中には、虚血性と出血性の2つのタイプがあります。米国では脳卒中の約80%は、動脈が詰まる虚血性のタイプです。脳細胞に流れる血液が減ると、酸素とブドウ糖(糖)が十分に届かなくなります。一過性脳虚血発作(TIA)は、ミニ脳卒中とも呼ばれ、脳梗塞が起こりかかっていることを警告する初期徴候です。一過性脳虚血発作は、短時間だけ脳の一部へ流れる血液量が不足することが原因ですが、すぐに血流が回復するため、脳梗塞のように脳組織の壊死には至りません。
残りの20%は、脳の内部や周囲に起きた出血を原因とする出血性脳卒中です。このタイプの脳卒中は、血管の破裂によって血液が正常に流れなくなります。さらに血液が脳組織の内部に漏れていきます。血液が脳組織に直接接触すると炎症を起こして瘢痕(はんこん)ができることがあり、これはてんかん発作の原因となります。
これら2つのタイプの脳卒中にとって重要な危険因子は、動脈の壁に脂肪物質が沈着して、動脈を狭めたりふさいだりするアテローム動脈硬化、高血圧、糖尿病、喫煙です。アテローム動脈硬化は脳梗塞でより重要な危険因子で、高血圧は脳出血でより重要な危険因子です。脳出血のその他の危険因子には、抗凝固薬、コカイン、アンフェタミンの使用、頭蓋内の動脈にできた動脈瘤、血管の奇形(動静脈奇形)、血管炎などがあります。脳卒中の発生率は、ここ数十年来下がってきています。これは主に、高血圧と高コレステロールをコントロールすることの重要性に多くの人々が気づいたためです。これらの危険因子を調整すれば、アテローム動脈硬化のリスクも減ります。
症状
脳卒中や一過性脳虚血発作が及ぼす影響は、血管が詰まったり出血が起きた脳の領域によって異なります。脳の個々の領域は、それぞれ固有の動脈が供給されています。たとえば、左脚の筋肉運動を受けもつ領域に血液を運んでいる動脈が詰まると、左脚に筋力低下や麻痺(まひ)が起こります。右腕の触覚をコントロールしている脳領域が侵されると、右腕の感覚が失われます。
早期治療が失われた機能と感覚を取り戻すのに役立つので、脳卒中の初期症状についてだれもが知っておくべきです。脳卒中の症状がみられる場合は、たとえ痛みがなくても、あるいは痛みがすぐに消えたとしても、ただちに医師の診察を受けることが必要です。3〜6時間以内に治療が開始されれば、重大な影響を少しでも未然に食い止めることができます。
脳梗塞の最も一般的な初期症状は、体の左右どちらかの顔面と脚に突然筋力低下や麻痺が起こる、不明瞭な発語、突然錯乱してうまく言葉が話せなくなったり相手の話が理解できなくなる、特に片眼に起こる急激なぼやけや視力の損失、平衡感覚と協調運動の消失に伴う転倒、突然の激しい頭痛、体の片側に起こる腕または脚の知覚異常や感覚消失などです。一過性虚血性発作の場合、症状は同じですが数分以内に消え、1〜2時間以上も続くことはめったにありません。
脳出血の症状は脳梗塞の症状とほぼ同じですが、さらに、突然の激しい頭痛、吐き気や嘔吐、一時的あるいは持続的な意識消失、非常に高い血圧などがみられます。
どちらのタイプの脳卒中も、異常な呼吸パターンが起こります。ゆっくりした不規則な呼吸は脳ヘルニアによるものです(ヘルニア:脳の圧迫 を参照)。脳ヘルニアは、頭蓋内圧が非常に高くなると起こり、脳が下方に押され、脳幹下部に位置する呼吸中枢をゆがめてしまいます。
脳梗塞の多くは、発症直後に機能が最も大きく失われるのが普通ですが、約15〜20%は病状が進行して1〜2日後に機能損失が最大になります。脳出血の場合は、機能は数分から数時間かけて徐々に失われていきます。
数日から数カ月後に、一部の機能が回復してきます。これはたとえ脳細胞の一部が壊死しても、傷ついただけの他の脳細胞が回復してくるためです。また脳のある領域は、障害された領域が受けもっていた機能を代行できます。脳がもつこの特性を可塑性といいます。しかし、麻痺などの脳卒中の初期の影響は、一生残るおそれがあります。筋肉のけいれんと硬直も恒久的になり、痛みを伴う筋肉のけいれんが起こることもあります。歩いたり、ものを飲みこんだり、言葉を明瞭に話すなどの日常行動がうまく行えなくなります。記憶、思考、注意力、学習能力などの問題も残るでしょう。患者は体の各部分を認識できず、脳卒中による影響を認識できないかもしれません。感情を制御できなくなって、うつ状態になることもあります。周辺視野が欠落したり、聴覚が部分的に失われる場合もあります。浮遊感と回転性めまいが続きます。腸や膀胱の調節機能は永久に損傷するおそれがあります。
ある種の要因は、脳卒中の経過が良くないことを示唆します。意識が失われたり、言語中枢がある左脳が広く障害されたりした場合は特に深刻です。成人が脳梗塞を起こしてから6カ月たっても神経学的損失が残っている場合、その障害は永久的になりがちです。一方、小児の場合は何カ月もかかって次第に良くなっていきます。高齢になるほど若い人よりも治りにくくなります。すでに痴呆などの重大な病気がほかにもある場合は、回復は限られています。
脳出血が大量ではなく、脳圧もそれほど高くならなかった場合は、脳梗塞よりも発作後の経過は良いでしょう。脳出血の血液による脳組織への損傷は、脳梗塞による酸素不足ほど広範囲にならないからです。脳出血患者は、数カ月から数年にわたり症状の改善が続いていきます。
予防
脳卒中は、治療よりも予防が大切です。予防戦略の中心は、危険因子の管理です。高血圧(高血圧を参照)と糖尿病(糖尿病を参照)はコントロールし、コレステロール値が高ければ下げて、アテローム動脈硬化のリスクを減らすようにします(コレステロールの異常: 治療を参照)。他にも、禁煙すること、アンフェタミンやコカインを使用しないこと、飲酒は適量を守ること、規則的な運動をすること、太りすぎなら減量することなどがあります。
アスピリンなどの抗血小板薬は、血小板が凝集してかたまりになるのを予防して脳卒中や心臓発作のリスクを減らします。アスピリンは最も効果が高い抗血小板薬の1つで、成人用錠剤の場合は1日に2分の1錠を、小児用錠剤の場合は1錠を(成人用の4分の1に相当する)服用します。ジピリダモールが処方されることがありますが、ほとんどの人はアスピリンと併用しなければ効果はありません。ジピリダモールとアスピリンの併用は、アスピリンを単独で服用するよりも効果があります。チクロピジンやクロピドグレルなどの他の抗血小板薬は、アスピリンが体に合わない人や効かない人に投与されます。心臓から移動してきた血のかたまりが脳の血管に詰まって起きた一過性脳虚血発作や脳梗塞には、抗凝固薬のワルファリンが使用されます(脳卒中: 治療を参照)。
リハビリテーション
集中的に行うリハビリテーションは、脳卒中による障害を克服するのに多くの患者に役立ちます(リハビリテーション: 脳の傷害を参照)。リハビリテーションの運動と機能訓練は、脳の可塑性(ある領域に異なる機能をもたせる能力)を高め、脳卒中に障害されなかった筋肉を使って失われた機能を補う方法を習得します。
リハビリテーションの目標は、できるだけ多くの正常機能の回復、身体状況の維持と改善、技能の再訓練と必要な新しい技能の習得などです。リハビリテーションの成功は、損傷した脳の領域と全身の健康状態、脳卒中以前の身体能力と認識力、社会的状況、学習能力、本人の態度にかかっています。忍耐と根気が、重要な鍵になります。
リハビリテーションは体を動かせるようになり次第、たいていの場合入院後1〜2日以内には始めます。退院後のリハビリテーションは病院の外来、老人保健施設、リハビリテーション専門病院、自宅などで継続していきます。作業療法士と理学療法士は、障害のある人が自宅や施設で無理なく安全に暮らせるように手助けをします。
家族や友人は、脳卒中が及ぼす障害を常に心に留め、障害のある人を理解し支えることでリハビリテーションに貢献できます。脳卒中患者や介護者の支援団体も役立ちます。
終末期医療
一部の脳卒中患者の生活の質は、治療したにもかかわらず大きく低下してしまいます。このような場合、治療の重点は、痛みの緩和、快適さの維持、水分と栄養の補給におかれます。脳卒中を起こした人はできるだけ早く、将来の治療に関する事前指示書(法的問題と倫理的問題: 事前指示書を参照)を前もって作成しておくとよいでしょう。というのも、脳卒中の再発と悪化はいつ起こるか予測がつかないためです。事前指示書は、もしも本人が意思決定できない状態になった場合でも、どんな種類の治療を望んでいるか確認するのに役立ちます。
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